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踏切の警報機、遠ざかる電車の音。 どこかなつかしい商店街の雑踏がそれに重なる。「男はつらいよ」でおなじみの場面の数々。 山田洋次監督の新作「おとうと」にはそれらが充ち満ちて 久しぶりの世界があっという間に拡がる。 映画の前半は姉吟子の娘、小春の結婚式を軸に展開。 ハチャメチャな行動で周囲を混乱させる弟鉄郎は、まさに寅さんそのもの。 そして後半は一転して、身よりのない人のためのホスピスが舞台。 ターミナルケアや看取りなど現代の死にまつわる問題が取り上げられる。 全編を通じ伝わってくるのは、例えどんな人であろうとも それぞれにそれなりの悩みや悲しみがあり、それを抱えながら 誰もがやがて死を迎えねばならないという事実。 ひとつ気づいたことがある。 劇中、主人公鉄郎がさりげなく「お兄さん」と呼ぶ人がいる。 肉親の姉を「お姉ちゃん」と呼び、兄を「兄ちゃん」と呼んでいるので そのようにかしこまって呼ぶのは義兄、つまり姉吟子の亡くなった夫しかないとすぐにわかる。 また、その呼び方の微妙な響きから、鉄郎が義兄を尊敬し慕っていたのだろうと察しもつく。 もし嫌っていたなら、「姉ちゃんの亭主」とか「あの人」とかと、はき捨てるだろうに違いないからだ。 義兄が皆の反対を押し切って娘小春の名付け親を鉄郎に託したエピソードが語られるにつけ、この「お兄さん」のたった一言で、吟子の夫ただひとりが一族の鼻つまみとしか扱われない鉄郎に対し、優しく正面から向き合っていただろう誠実さが明らかになる。 義兄本人は、スクリーンには一度も姿を現さないにも関わらずである。 そこに山田洋次の語り口のうまさを感じ、思わず膝を打ったのだった。
by anculucinema
| 2014-07-22 02:17
| 邦画
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