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中島京子の第143回直木賞受賞作を、山田洋次が映画化した作品。
元女中だったタキが、親類の青年 健史(たけし)に勧められ、自身の回想を書き留めるうちに、かつて奉公していた平井家の人々を振り返り、そこでのある 「秘かな恋愛」 について思いを巡らせる物語・・・ 昭和初期から、次第に戦況が悪化していく東京の中流家庭の庶民の生活が、きめ細やかに描かれます。 健史の大叔母にあたるタキが残した大学ノート・・・ それは、晩年の彼女が健史に励まされながら綴っていた自叙伝でした。 昭和11年、田舎から出てきた若き日のタキは、東京郊外にある赤い三角屋根の小さくてモダンな屋敷に住む平井家の女中として働くことになります。 そこには、主人であるオモチャ会社の常務 雅樹と美しい年下の妻 時子、二人の間に生まれた男の子 恭一が暮らしていました。 何より穏やかな彼らの生活を愛し、美しく優しい時子を慕うタキ・・・ ところが突然、雅樹の会社に新しく雇われたデザイナー 板倉という青年が現われ、一家にざわめきが・・・ やがて、この青年に時子の心が乱れていくことにタキは気づくのです。 「小さいおうち」 の安穏な暮らしに、ふと波風を立たせる奥様 時子の恋もよう。 その小さな波紋が、戦争という大きな歴史のうねりに飲み込まれ、ひとりの若い女中の心に、生涯拭いきれない禍根を残す悲劇となっていきます。 庶民のささやかな暮らしの背後に、不気味に見え隠れする戦争のどす黒い影・・・ これは、ファミリードラマを装って見えるけれど、れっきとした反戦映画なのだと思いました。 戦時中と言えば、とかく暗くて悲惨な生活というイメージがあります。 でも、少なくとも本土空襲が始まるまでは、夫は毎日会社に出勤し、妻は女中と一緒に家事育児に忙しく、そして時にはコンサートに出かけたり、喫茶店でお茶を楽しんだりと、普通の暮らしだったようすが伺えます。 しかし、そんな暮らしの端々に、大震災、中国との関係悪化、オリンピックの開催決定という、驚くほど現在とそっくりな当時の状況が、さりげなく語られます。 だからこそ、戦争はある日突然やって来るのではなく、市民の生活にじわりじわりと忍び寄り、気がつけばもうとり返しがつかなくなっていたという歴史の事実が、とても身近に感じられるのです。 平井家の親戚に当たる老作家が 「僕みたいなイイカゲンな人間が生きにくい世の中になって来るようでイヤだね。」 と、つぶやくシーンがあります。 昨今のこの国のありさまに、同じような不安を感じるのは、アンクルだけでしょうか?・・・ 「小さいおうち」 は、結局空襲で焼け落ち、平井夫妻は防空壕の中で手を取り合って亡くなっていたと、その後の風の知らせでわかり、タキの自叙伝もここで終わります。 そして、この話を書き終えたあと、タキは「長く生き過ぎた」と号泣します。 「小さいおうち」 の 「小さい幸せ」 が 「小さい秘密」 とともに、自分たちにはどうすることも出来ない「大きい戦争」の靴音に踏みにじられた、哀しみの涙でした。
by anculucinema
| 2015-09-13 16:40
| 邦画
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