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『ディア・ハンター』 でアカデミー賞を受賞したマイケル・チミノ監督が、アメリカ西部開拓時代の悲劇として知られる “ジョンソン郡戦争” をモチーフに作り上げた西部劇超大作。
巨額の製作費にもかかわらず興行的に失敗、ハリウッドの老舗スタジオ、ユナイテッド・アーティスツを破産に追い込み、「呪われた映画」として封印された問題作でもあります。 封切から30年以上の時を経て、デジタル修復によってよみがえった216分のディレクターズカット版が公開され、それを京都シネマで見ました。 19世紀末、ワイオミング州には東欧からの移民が増加、富裕層である牧場主との対立が激化していた。 ハーバード大学で青春時代をともに過ごしたジェイムズとビリー。 20年後、保安官となったジェイムズはワイオミング州で牧場を営むビリーと再会を果たす。 ジェイムズはビリーから、牧場主たちが移民に牛泥棒の罪を着せ、皆殺しを計画していることを耳にする。 さらに、ジェイムズは町に住む東欧移民のエラに思いを寄せていたが、そのエラの心は彼と牧場主に雇われたガンマンのネイサンとの間で揺れ動いていた。 やがて、町には牧場主たちの傭兵が集結し、ついに移民たちとの戦争の火蓋が切られることになる。 保安官のジェイムズ、牧場主のビリー、それにエラもまた否応なくその戦争に巻き込まれ・・・ 「大駄作」とニューヨーク・タイムズにこき下ろされ、メディア、業界、批評家からのヒステリックなまでのバッシングにより早々と上映を打ち切り、その製作費を回収するすべもなく、名門スタジオをつぶしたイワクつきの映画です。 アメリカ以外の国ではそれなりに評価もされたようですが、一度貼られたレッテルをはがすのは容易ではなく、闇に葬り去られた悲劇の映画・・・ DVDでしか見ることが出来ないとあきらめていたのに、思いがけず劇場のスクリーンで見ることが出来ました。 あらためて見てみると、確かに時間が長くて冗長にすぎるキライはあるものの、重厚な画面づくりと筋立ての面白さで、3時間半あまりの時間を決して飽きさせませんでした。 むしろ、スケールの大きな西部劇として『ディア・ハンター』を凌ぐような作品で、決して云われるような駄作とは思えませんでした。 西部劇好きなアンクルとしては、久しぶりに楽しめた作品でしたけど・・・ この作品がアメリカ人にウケなかったのは、19世紀末の富裕階級による移民の粛清という、この国の恥部ともされる “ジョンソン郡戦争” の事実をテーマにしたからだと思います。 粛清を仕掛けた富裕な牧場主のほとんどがアングロサクソン系・・・ 現在も保守的なWASPや茶話会派、それにアメリカの支配層の多くにその系列の流れは脈々と受け継がれています。 移民のルーツに根ざす差別意識が、その水脈の根底に今もうごめいているのです。 表向きは 「自由と平等」 などと掲げてはいるけれど、その実、計り知れないアメリカという国の根深い闇の部分・・・ それをあぶり出したこの映画は、多くのアメリカ国民にとって、隠していた傷あとを剥がされるような痛みを伴ない、とうてい認め難いシロモノだったのでしょう・・・ それが、この映画が陽の目を見られなかった本当のところだろうと思います。 そしてもうひとつ、この当時のアメリカ社会の “思索と瞑想” を嫌う傾向は、なんちゃらミクスにうつつを抜かし、ゆがんだナショナリズムに無批判に走る、どこぞのちっぽけな国の昨今にもぴったり当てはまるような気がしました。
by anculucinema
| 2015-09-13 17:01
| 洋画
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