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ユニークなスタイルで有名なスウェーデンの奇才ロイ・アンダーソン監督が、第71回ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した作品です。
シュールでかつブラックな笑いに満ちた39の挿話・・・ とはいえ、それぞれのお話しに脈絡はありません。 それでも、構図、配置、配色、美術など作品の細部にまでこだわり完成に4年を費やしたとか・・・ まるでくすんだ絵画のひとつひとつが動き出したような印象を受ける作品です。 面白グッズを販売しているサエない2人組のセールスマン、サムとヨナタン・・・ 彼らが一応主役らしいのですが、彼らを中心にストーリーが展開するワケでもありません。 彼らが行く先々で遭遇する一風変わった人々の、どうあがいてもうまくいかない、悲喜こもごもの人生が次から次へと綴られます。 例えば・・・ フェリーの食堂で、お金を払って注文した食べ物に手もつけずに死んでしまった男の、その食べ物を誰か要りませんか?と死体を横目に他の客に呼びかけるウエイトレスに、ひと呼吸おいておずおずと手を挙げる男とか・・・ 天国まで持っていくと宝石入りのバッグを手放さない亡くなる直前の老女とか・・・ 何でもない市井の人たちの日常のひとコマが、どこか滑稽で切ない情景として浮かび上がります。 そして、そこに「元気そうで何より」って云うセリフがたびたび被さるのが、シニカルで皮肉っぽい。 そうかと思うと、現代のバーに不意にスウェーデン国王率いる18世紀の騎馬軍が立ち現れたり・・・ どこかの兵士たちがアフリカの奴隷を巨大なローラーに放り込んで火にあぶり、その阿鼻叫喚ぶりを鑑賞する人たちの表情が捉えられたりとか・・・ ありえないし、チョッと背筋が凍ったりするエピソードが挟まれていたりもします。 とにかく不思議な感覚の映画です。 オムニバスというよりもまったく関係ない39のコントが集められていると云った方が正確かも・・・ それでいて全体にどこかつながっている演出が心憎い。 (先の話に出ていた人物が次のシークエンスで画面の端にチョロッと映ってたりします。 上のシーンのふたりが下のシーンの右端にチラッと・・・ちなみにこのふたつのシークエンスはまったく関係ない話です・・・) 全体に白く埃っぽい画面で、登場人物たちも同じように白く生気のない顔をしています。 奥行きが強調された背景と相まって、どこかリアルさに欠けています。 しかも、どの話もよく考えればシリアスなのになぜか可笑しいのです。 それは、登場人物の会話や動きが、どこかワンテンポずらされているからです。 その間合いがとても面白いと思いました。 このとぼけてどこか人を喰った『間』がこの作品の真髄だと思います。 そして、そこに可笑しいけどやがて哀しい、人間のホントの姿が凝縮されているように感じました。
by anculucinema
| 2016-08-28 23:52
| 洋画
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