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ハンガリー出身のアゴタ・クリストフの小説を映画化。
第2次世界大戦下と思われる過酷な時代を生き抜く双子の日記を通して見た世界が描かれます。 両親と離れて見知らぬ村にあずけられた少年たちが、戦時下の異常な日常の中で、自分たちで見出した独特のルールに従って、大人たちの世界を冷徹に見据えそれに対処していく姿が、善悪やモラルを超えて観るものに迫って来ます。 戦時下、双子の兄弟が「大きな町」から「小さな町」へ疎開する。 疎開先は、村人たちから「魔女」と呼ばれる祖母の農園。 双子のボクらは、乱暴で意地悪なお祖母ちゃんに「働かざるモノ喰うべからず!」とコキつかわれながら、聖書を暗唱し、日々の出来事を日記に克明に記す。 聖書の暗唱は「どんなことがあっても勉強だけは続けなさい!」とのお母さんとの約束だし、日記を書くことはお父さんの云いつけだからだった。 つらく過酷な日常生活にあって、生き抜くために肉体と精神を鍛え、日々の体験だけを頼りに、ボクらは独自の世界観を獲得していく。 物語は双子のボクらが日記に書き記すコトバとして展開していきます。 日記の書き方にはボクらなりのルールがあって「お祖母ちゃんは魔女のようだ・・・」はダメ。 「村人はお祖母ちゃんを魔女と呼ぶ!」なら構わないという具合です。 つまり主観的な感情を一切排した、事実のみで物語が構成されるのです。 お祖母ちゃんは何かにつけボクらを殴るし、村人たちもワケもなく人を殴りつけます。 時は戦時下、殺し殺されが当たり前の日常、弱い人は簡単に死んでしまう。 生き延びるには、どんなことをしても強くなくては・・・ それがボクらの得た哲学でありルールです。 「 ” 汝殺すなかれ ” っていうけど、みんな殺しあってる!」 金をせびろうとした司祭に、聖書の十戒を持ち出されて諭されたときの、ボクらの言葉です。 モラルや正義などとキレイごとを並べ立てても、不実と暴力にまみれた世界こそ大人のホントの世界・・・ 主観を排し、徹底的に非人間化された視点で見れば、善も悪もモラルも感情によって左右されたものにすぎないことがよくわかります。 こちらから見れば「善」、でもあちらから見れば「悪」にほかならない。 この世に絶対の「善」は存在しないし、絶対の「悪」もまた無いのです。 それでは、人間にとってホントの善悪とはいったい何なのか?・・・ そんなことを考えさせられました。
by anculucinema
| 2015-12-02 14:46
| 洋画
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