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大韓帝国初代皇帝の娘でありながら、日韓併合という時代の波に翻弄された皇女のドラマ。 日本統治時代、日本へ留学させられた皇女が母国の独立運動を画策する幼なじみと再会、帰国を願うも叶わぬ悲劇がスペクタクルに展開されます。 『四月の雪』などでおなじみのホ・ジノ監督作。 『ラブストーリー』のあどけないおさげ姿が心に残るソン・イェジンが、ここでは迫真の演技を見せます。 李氏朝鮮第26代国王から初代皇帝となった高宗の娘・徳恵(トッケ)翁主は、1925年、心ならずも朝鮮総督府によって日本に留学させられます。 祖国に帰れることばかりを願う徳恵は、数年後東京で大日本帝国陸軍少尉になった幼なじみのキム・ジャンハンと再会。 ジャンハンは一方で祖国の独立運動のメンバーとして暗躍していました。 そこで彼は徳恵を亡命させるための計画を進めるのですが・・・ 『ラストエンペラー』を彷彿とさせる波乱万丈のドラマです。 日本と韓国というだけでなく、東アジア全体の激動の時代を俯瞰していると感じました。 そしてその渦中に翻弄された、これもまた当時多く存在した悲劇のひとつと云えるでしょう。 愛新覚羅溥傑とその妻浩、長女慧生のたどった半生と、どこか重なる印象を受けました。 ただ、映画の冒頭わざわざ「これはフィクションです」と断り書きが入る稀有な作品です。 ドラマティックですが、これが事実ならあまりにもご都合主義的なところは多々感じられました。 実際の徳恵翁主は日本の生活に馴染み、帰国願望などがことさらに強かったわけではなかったようです。 もともと統合失調症の既往歴があったようで、劇中のようにそれを誘発する悲惨な体験があったのではなさそうです。 娘の自殺に関しても既に統合失調症の症状があり、遺伝的な要素がその要因のようです。 すでに末期症状を呈していた滅びゆく王朝の落日が、時代の流れに呼応したのが本当のところかも知れません。 しかしこの作品から学ぶべきは、戦争という究極のイントレランス(不寛容)は、主人公のような支配階級ばかりでなく、広島・長崎に見られたような無垢な市民をも巻き込んで、その人権を踏みにじる卑劣極まりない行為でしかないということです。 そのことをあらためて痛感しました。 昨今、何やら危機を煽って戦争を正当化しようというムードがつくられつつあるのが気になりますが・・・ そういう今こそ、戦争という行為はいかなる大義名分をでっち上げようとも、ただ人々を不幸にするだけの救いようのない愚行でしかない・・・ そう肝に銘ずべきと、この作品は訴えていると思いました。 #
by anculucinema
| 2019-01-11 23:31
| 外国画
<エイリアン>シリーズの原点となるSFホラー。 人類移住のため宇宙船コヴェナント号で旅立ったクルーたちが、未知の惑星で遭遇するのは?・・・ 第1作の監督リドリー・スコットが再び築きあげる世界観とは?・・・ 滅びゆく地球から脱出し、人類移住計画を託された宇宙船コヴェナント号。 そこにはカップルで構成された乗組員が搭乗し、冷凍休眠中の2,000人の入植者と1,000体以上の人間の胎芽が乗せられていました。 やがて、計画にはなかった未知の惑星にたどり着くコヴェナント号。 そこは地球にとても似通った惑星でしたが、実はそこには想像を絶する脅威が秘められていました。 その恐怖を次から次と突きつけられた乗組員たちは、命からがらこの惑星からの脱出を試みようとするのですが・・・ 別にエイリアンに興味があるワケではなく・・・ リドリー・スコット独特の映像感覚に関心があっただけです。 エイリアンシリーズも第1作を見ただけで、それ以降はほとんど見てないし・・・ ただ、お話は第1作にソックリで、リメイクかと思いました。 ところが実は、この作品は第1作の前日譚で、その20年前の設定なのだそうです。 前作「プロメテウス」の続編らしいのですが、見てないのでつながりは分かりません。 でも、独立したお話として充分楽しめましたけど・・・ ふだん見慣れた情景を全く異次元の世界に変えてしまう、リドリー・スコット独特の映像感覚が楽しめました。 しょっぱなのシーンなど、どこかタルコフスキーの世界を彷彿とさせ、見応えがありました。 第1作と違うのは、アンドロイド(いわばロボット)が大きな役割を担っていることでしょうか? アンドロイドが新しい世界を創造する野心を持つ、つまり神になろうとするプロセスが今回のテーマのようです。 それはロボット化が進む現代に、警鐘を鳴らそうとしているかのように見えなくはない。 滅びかけている種、すなわち人類に未来は無く、それを生かすより肥やしにして、新しい種を育てる方が理にかなっている。 そう考えて、それを実行に移そうとするアンドロイド。 しかしそのアンドロイドは、誰あろう人類に手によって生み出されたのです。 何とも皮肉な巡り会わせで始まる劇的な展開・・・ 近未来に場所を移しているけれど、ふとギリシャ悲劇を見る思いでした。 #
by anculucinema
| 2019-01-08 22:58
| 外国画
是枝裕和監督の新作、今回は法廷サスペンス。 死刑が確実視されている殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が、犯人とのやりとりの中で動機に疑念を感じ、真相を知ろうと奔走します。 重盛は勝利にこだわる弁護士。 裁判で勝つためなら事件の「真実」は二の次、依頼人の理解や共感などは必要ないと言い切るクールな男です。 その彼が殺人容疑のかかったある男の弁護を引き受けます。 男の名は三隅。 30年前に強盗殺人の前科を持つ男で、クビになった工場の社長を殺し金銭を盗み、あげく死体に火を付けたのです。 自供もしているので容疑はほぼ確定、このままいけば死刑は確実と思われていました。 初めは渋々この仕事を受けた重盛でしたが、三隅と顔を合わせるうちに本当にこの男が犯人なのか?と感じ始めます。 接見室で殺人の動機を聞かれても、ぬらりくらりとどこか他人事でからっぽな印象しかない三隅。 次第に重盛は、彼は殺人を犯したのか?もしそうなら一体どんな理由で殺したのか?と疑念を持ち始め・・・ 三隅本人や家族、被害者とその周辺を始めから洗い直します。 すると、被害者家族にも隠しておきたい秘密があることや、被害者の娘のおぞましい証言と容疑者との不可解な交流など、意外な供述が次々と現れて・・・ しかも、裁判の最終段階で容疑者が一転して「自分は殺していない」と主張する。 本当に殺したのか?そうではないのか?真相は混沌とします。 が、裁判はそのまま続き、何事もなかったかのように三隅に死刑判決が言い渡されて結審します。 何が本当なのかは結局わからずじまいで・・・ 法廷は裁判官、検事、弁護士のいわば利害調整の場であって、真実が追及される場ではない。 それがとても現実的な問題として浮かび上がって来ます。 極端に云えば、検察は容疑者がやっていないとしても犯罪として立証しなければならないし、逆に弁護側はやっていたとしてもやっていないように立証しなければならない。 それが双方の役割であり、仕事だからです。 裁判とはそのせめぎ合いなのです。 法廷では、被告や証人、関係する者たちすべて、そのせめぎ合いに巻き込まれます。 そこでは誰も本当のことを語らない。 自分に有利なことしか話さず、不利なことは隠し通そうとする。 そんな在りようがリアルに描かれます。 本当のことは誰にもわからない。 人は誰も自分以外には決して本当のことを明かさない・・・ 実はそれこそが真実なのかも知れません。 芥川龍之介じゃないけれど・・・ 世の中とはおしなべて『薮の中』だということでしょう・・・ #
by anculucinema
| 2019-01-07 22:41
| 邦画
無差別殺人事件を起こした加害者青年と彼の父親を中心とするその家族。 理想を目ざす家族だったはずなのに、いつの間にかそれが崩壊していくさまが描かれます。 親から受け継いだ金物屋を営む父親・葛城清。 妻・伸子と共に2人の息子を授かり、念願のマイホームも建てて、理想の家庭を築き上げようと奮闘するのですが・・・ その強い願いはいつの間にか家族を抑圧し、妻や息子たちを支配する行動へと姿を変えます。 長男・保はそれに対し従順ですが、対人関係がうまく行かず、会社をリストラされたことを家族にも云い出せない。 そしてその重圧に耐えられず、とうとう自ら命を絶ってしまいます。 何をやっても長続きせず、それを父親に責められては日常的に暴力にさらされている次男・稔は、理不尽な思いを募らせある日突然、8人を殺傷する無差別殺人事件を起こします。 母・伸子は夫・清の横暴や息子たちの事件に心のバランスを壊し、精神病院に入院してしまいます。 死刑判決を受けた稔は、死刑制度反対を訴える女性・星野と獄中結婚、彼女は献身的に彼に寄り添おうとするのですが・・・ 彼女の思いは独善的で、稔本人や父親・清とすれ違い、さまざまな軋轢を生み出します。 崩壊していくファミリーの物語。 一見どこにでもいる家族に見えるけれど、でもどこか何かがおかしい。 例えば、父親・清が長男の結婚記念日に家族で訪れた行きつけの中華料理店で、延々と理不尽なクレームを繰り広げるシーン。 こういう人時々いるなぁ、という光景なのだけれど、とても後味の悪さを感じさせる不穏な空気が漂います。 そんな何でもないチョッとした日常のズレの積み重ねが、一気に崩壊に向かうクライマックスがすさまじい。 どこにでも居るごく普通の人たちの、実はその心の奥底に潜む暗い闇がじっくりとあぶり出されます。 これは特別な家族の話ではなく、どこかの誰か、つまり我々にもひょっとしたら当てはまるかも知れない、そんなそら恐ろしさを感じさせました。 先に観た「愚行禄」のどこかウソっぽい印象とは異なるリアリティに圧倒されました。 ただ、これだと父親・清が極悪非道の怪物にしか見えない印象はまぬがれません。 おそらくこの父親も、息子たち、とりわけ次男に示すのと同じような扱いを、実は自ら受けて育ったことは想像に難くない。 そんな断片がもう少しプロットとして散りばめてあったら・・・ 家族の負の歴史が何代かにわたり積もり積もって、ある日堤防が決壊するように突然崩れてしまう。 ただ殺人鬼一家の話というだけに止まらず、防ぎようのない悲劇性がそこに加わったのでは?と感じました。 そうすれば、善悪を超える人間の「業」のようなものにまで踏み込めたかもしれないと・・・ 重苦しい息詰まるような緊迫感が全編をつらぬき、娯楽作としてはとてもお薦めできないけれど・・・ アンクル的には、久しぶりに手応えのある作品に出会った充足感を味わいました。 #
by anculucinema
| 2019-01-07 22:30
| 邦画
マイアミを舞台に、アイデンティティを模索する少年の成長を、少年期、青春期、成人期の3つの時代構成で描き、第89回アカデミー作品賞ほか、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞した作品。
アカデミー授賞式で、これとは違う作品が作品賞として発表され、慌てて訂正されたドタバタが記憶に新しいところです。 トランプ大統領批判の大合唱となった授賞式が、そのことで逆にトランプから揶揄される羽目になったいわくつきの作品となってしまいました。 マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校ではいじめられ、家庭では麻薬常習者の母親からないがしろにされ・・・ そんな彼に優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ・・・ やがてシャロンはケヴィンに友情以上の好意を抱くようになります。 しかし、そこではそんな同性愛の感情は決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられず、悶々とした孤独感に苛まされ・・・ 主人公は黒人でありつつ、なおかつ性的マイノリティという、二重の差別構造の中にいます。 それがゆえにいじめられ排斥される少年期から青春期。 それでも、そのコミュニティの中では開き直って凄まなければ生きていけない。 ある事件からそう悟り、態度を一変させる成人期への転機の一瞬・・・ そして、今や麻薬ディーラーのボスとして君臨する彼だったのですが・・・ そこに、かつての親友であり恋心を抱いたケヴィンから思いがけない連絡が・・・ そして再会したその場で、明らかにされるお互いの切なく哀しい心情が胸に響きます。 燦燦と降りそそぐ明るい陽の光ではなく、秘められた心の奥底からほとばしる静かな淡い光・・・ 青く輝くムーンライトに照らされる主人公のシルエットがこの上なく美しい。 人生の悲哀を詩的な繊細さで描いた、とても質の高い作品だと思います。 とはいえ白人はひとりも登場せず、黒人とヒスパニックがドラマの中心で、しかも同性愛の物語。 差別志向と偏見に固まったトランプやその支持者たちには、恐らく許しがたい作品に映るでしょう。 さらに、極右に傾いた不寛容な逆戻りが世界的に幅を効かすこの不穏な時代に、それに真っ向から挑戦するかのような世界観をあえて突きつける・・・ よくこんなドラマを今のアカデミー賞が採りあげたな!と感心します。 アンクルは今まで、大金を注いで毒にもクスリにもならないくだらん作品を量産する、ハリウッドの商業主義を激しくこき下ろして来ました。 しかし商業的にむずかしくても、人の心を揺り動かす珠玉の名作をいくつか生み出して来たのも、またハリウッドだということはよく承知しています。 今回のように、けっして時代の流れや時の権力に迎合せず、自分たちの感じるところに正直に、あえて本作のような地味だけれど良質な作品にはアカデミー作品賞を贈ることもいとわない、ハリウッドのその筋の通った姿勢には拍手喝采です。 そのフトコロの深さにはやっぱり敵わないかなぁ!と思ってしまいます。 #
by anculucinema
| 2019-01-07 16:54
| 外国画
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